ならばお好きにするがいい。
ざり、熱くなった砂を踏みしめる音。
一瞬の静寂。
そして……その静寂を引き裂いた、痛いくらいに甲高いホイッスルの音。
同時に激しいボールの投げ合いが始まって、コートの周りは一斉に盛り上がる。
ほとんど互角。
あの日の練習試合で火がついた樫芝先生のクラスが、私たちのクラスに負けないくらい練習していたことを、私はよく知ってる。
だから互角で当たり前。
でも、負けない。
絶対絶対負けない。
だって、私たちには小田切先生がついてるから。
「小田切せんせ……!」
名前を呼べば、すぐに助けに来てくれる。
名前を呼ばなくても、すぐに気付いて助けてくれる。
だから私にボールは当たらない。
ひらりひらり、飛び交うボールをかわしながら、流れる汗を拭う。
拭っても拭っても、滝のように流れる汗。
太陽はコートを焦がすかのようにじりじりと強烈に照りつける。
「……う」
なかなか勝負がつかず、試合が長引くにつれて、私は頭がぼうっとしていくのを感じていた。
だんだん意識が朦朧としてきて、視界もぼやけてくる。
汗を拭うのも忘れて、私はほとんど無意識に、感覚だけでボールをかわしていた。