ならばお好きにするがいい。
「せんせ……ありがと……」
その私のお礼の声は、バンッ!っという激しく扉の開く音にかき消された。
びくり、私と先生の肩が同時に揺れる。
「莉華ーっ!!!!!」
シャッとベッドの回りのカーテンが開けられたかと思ったら、なんと閉会式を終えたクラスのみんなが一斉に押し寄せてきた。
「おお!良かった!目ェ覚めたんだな結城!」
「心配したんだよ莉華ーッ!」
「無事で良かったあ!」
わいわいとベッドを取り囲むみんなのせいで、落ち着きつつあった涙がまた溢れ出した。
「オイお前ら、ここ保健室だぞ。もうちょっと静かに……」
「あれれ、小田切先生こんなところにいたんですか。閉会式にいないと思ったら」
「まさかあれからずーっと結城の側にいてあげてたんですか?小田切先生、そんなに結城のことが……ヒュ~!」
「黙れ糞ガキ!シメられてーのか!」
「あはは!」
そんな楽しそうな先生とみんなのやり取りを見ていたら、数ヵ月前までのあの険悪なクラスの雰囲気が嘘みたいに思えて。嬉しくて嬉しくて、思わず笑顔になる。
「だから無理するなって言ったじゃない」
たしなめるような口調でそう言ったのは聡未だった。
「ほんっとバカよねアンタは!」 腕組みしながら眉間に深いしわを寄せている聡未に、ぺこりと頭を下げる。
「ごめんなさい」
すると、小さくため息をついた聡未は、私のほっぺの涙を、柔らかいハンカチで優しく拭いてくれた。
「優勝したよ」
そう言って、ニッと笑った聡未。
それを皮切りに、みんなも口々に決勝戦の様子を語り始めた。
「小田切先生と結城が抜けた後はどうなることかと思ったけどな!」
「男子が頑張ってくれたおかげで勝てたんだよ!」
「いや、頑張ったのは女子の方だろ!」
「みんな頑張ったってことでいいんじゃない?」
「そうだな!みんなで頑張ったから優勝できたんだ!でも……」
「頑張れたのは、小田切先生と結城のおかげだよな」 そう言ってニカッと豪快に笑った男子の言葉に、みんなはうんうんと頷いた。