ならばお好きにするがいい。
 
アイスがずらりと並べられたケースを覗き込みながら、しばらく考え込む。


抹茶、チョコ、ストロベリー、バナナ、マンゴー、レアチーズ……どれも美味しそう。


でも、やっぱりバニラかな!


ケースからバニラ味のソフトクリームを取り出してはみたものの、そこでピタリと思い止まる。


だって……だってやっぱりキャラメルの方が美味しそうに見えるんだもん!


ソフトクリームをケースに戻して、キャラメル味のカップアイスを取り出す。


そして再び思い止まる。


やっぱり、ソフトクリームの方が食べたいかもしれない……。


カップをケースに戻して、ソフトクリームを取り出したけど、やっぱりキャラメルの方が食べたいような気がして、ソフトクリームを戻して再びカップを手に取った。だけどやっぱりソフトクリームの方が……。


「いい加減にしろ」


カップを戻そうとケースに手をかけた時、後ろから先生にぺしんと頭を叩かれた。


「だってぇ~……」


先生はハァ、と大袈裟にため息をつくと、ジャージの上着のポケットをごそごそまさぐりだした。


「ほら、これやるから」


「二つとも買え」 そう言って、ポケットから取り出した自分のアイス券を私に手渡す先生。


「い、いいの!?」

「俺が持っててもどうせ使わねーしな」

「わーいっ!ありがとう!先生大好き!」


バニラのアイスとキャラメルのアイス、二つとも抱えてお会計。


二枚のアイスを差し出した私に、私と先生のやりとりを見ていた売店のおばさんは、にっこり微笑んでくれた。


「優しい先生で良かったわね」


その言葉に、思わず私は大きく頷いた。




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