愛羅武勇×総長様 Ⅱ
「みんな言ってくれたのに…遼だけ全然言わないから…」
上を向いているから、遼がどんな表情をしているか分からない。
「ごめんな…?」
遼の困ったような声が聞こえた。
「俺さ、ずっと決めてたんだ。」
さっき座ったばかりの椅子から、再び立ち上がった。
あたしの目を見て話し出す。
「"おめでとう"は、結婚式当日にならねぇと、言わねぇって。」
「え…?」
「何回も言うより、当日にめちゃくちゃ気持ち込めて言った方がいいと思ってさ。」
何だ………そんなこと思ってたんだね。
「うん、だからさっき言われたとき、グッときた。」
今まで言ってくれてなかった分、さっき言ってくれた「おめでとう」が、何倍も嬉しかった。
「だろー? 俺すっげぇ気持ち込めて言ったもん!」
「ありがとね。」
「お礼言われるようなことしてないから、当然のことをしたまで。」
そう言って、ドアの方へ歩き出した。
扉を開けようと、ドアに手をかける。