愛羅武勇×総長様 Ⅱ
看護士さんの後ろをついて歩くと、病院独特の消毒の匂いがし始めた。
「はい、そこ座ってね。」
「はーい…」
「あの男に殴られたの?」
「まぁ……」
「ごめんね、あたし今日夜勤だったからずっと居たんだけど、全く気付かなくて…」
「あぁ、いいですよ。多分来たらあの男に殴られてたと思いますし…」
「でも良かったわね、大きな怪我じゃなくて。
おでこの切り傷は下手したら縫わなきゃならなかったかも……」
良かったー…投げてきたのが缶で…
いや、良かったってことはないんだけど。…中身が無ければ血なんか出なかったのになぁ…
花瓶とかだったら…考えただけでも恐ろしい…
「さっきの小さい子、彼氏さん?」
「あぁ、あたしの彼氏は金髪の方の…」
「あ、昨日運ばれてきた患者さんのこと?」
「はい、暴走族の総長してるんです。結構危ないことばっかりですけど…」
「そっか、大変なんだね」
そう言いながら、慣れた手つきであたしの額にガーゼを貼る看護士さん。
「でも毎日楽しいですよ。刺激的で」
「何事も経験だもんね。」
「はいっ」
殴られて切れた口元にも消毒してもらって、絆創膏を貼ってもらった。
「はい、出来た。」
「ありがとうございました!」
看護士さんにお礼を言って、大ちゃんの病室に走って戻った。