おん、ありがとな。


 5時間目、校庭でだるそうに準備運動してこれまただるそうに話を聞く宮前が見えた。原本くんは宮前には何しとっても可愛い可愛いと言う。そらもうヘタレやの阿呆やの言われとっても可愛ええなぁー、と頭を撫でる。ま、それも振り払われんねんけど。

 あの二人、いつから付き合うてんねやろ。宮前は一年の時からこの部活にはおった。けどもうその頃から原本くんにべったり…ちゅうか、原本くんが宮前にべったりやった。


 宮前は、ちょっと、というか、かなり、変や。女の子やねんけど一人称が“僕”。別にあの子がうち、とか私、とか言っとるとこは見たないけど、かといって男らしいというわけでも、ない。

『僕男に生まれてきたかってん、先輩はどうですか?』

『私は…あんまそないなこと考えたことあらへんなぁ…』

『…』

『宮前?』

『あ、や、…せやんな、普通やんな。結局変えられる訳ちゃいますもんね』


 …まぁ、不思議な子やねん。可愛い後輩に代わりないけれども、理解が難しいねん。

 それをくるめてまう原本くんは、すごいなぁっていう話。

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