おん、ありがとな。

「先輩、どうしたんですか」


 これ、高2の3の入り口で私がうろうろしとったら宮前が発した第一声な。どうしたんですかって、そんな大したことやないねんけど。

「ああ、よかった。おらんからもう帰ってもうたかと思うたわ」

「…阿呆、僕まだ体育着やろが」

 せや、帰ってきたばっかやねんな、あぁ、話繋がらん。この子が苦手やった頃を思い出すわ。

「せやな…」

「…や、遅かった僕が悪いんですわ。先輩授業終わってすぐ来てくれたんやろ?やから、吃驚して、…」

 せやけど優しい子なんや。特に私には、なんでか知らんけど結構、部活中も寄ってくんねんで。可愛えねん、やっぱ。

「おおきになぁ。あ、あんな?明日部活のうなってん。やからそのまま帰ってええよって」

 あれ、私何か変なこと言った?宮前の表情が珍しく変わった。驚き、みたいな。

「……え、そないなこと言うためにわざわざ来たんですか」

「せやで?…ん?何や可笑しいとこあった?」

 宮前は首を横に振って、なんでもないと言った。変なこと言ったんかなぁ、私。

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