おん、ありがとな。


「いえ、暇やなぁ…て」

「ふふ、せやね」

「…すいません」

「え、どないしたん?」


 宮前は「何も」と言うとほんのちょっと笑うてほなまた、と教室に引っ込んでもうた。

「何やったんやろ、変な子やなぁ」

 はっきり言うて宮前とは話が長く続かん。あの子、変な癖あんねん。いきなり謝んの。「すいません」って。せやけど何で謝ったんかこっちには判らんねん。しかも表情に出んし、ほんま判らんねん。私にはな。


 あ、私他に考えなあかんことあるやん。国仲くんに任せきりやなくて私も何やせんと。

「せやかて働くなん考えんかったからなぁ…」


 ぶつぶつ。
 いきなり非現実的なこと言われても結局私には綺麗な空を目で追うことしかできん。何も出来んねや。


「国仲くんてすごいお人やわ、ほんま…」

 部活のとき喧嘩んなっても国仲くんが入って仲直りさせるし、みんなの知らん時に買い出しにも行ってはるし、正直、私は何もしとらん。国仲くんおらんかったらこの部活は成り立たんねん。きっと。


< 21 / 25 >

この作品をシェア

pagetop