あなたの腕まで、あと何センチ?
最初は、皿洗い。ホールやキッチンの掃除。そして、軽食の調理。コーヒーのいれかた。
最後に、接客。
はじめてのバイトは、難しい事ばっかり。
私に、教えてくれるのは同い年の、向坂奏矢くん。
でも、飴とムチの教育で毎日ボロボロ。
『さーくーらー!』
げっ!また、向坂くんが怒ってる。
『はぃ…?』
『なんで、サンドイッチをきれいに切れないんだ!』
『長さ加減が、難しくて…1個だけ短くなっちゃって。』
『これは、お客様にだすんだぞ!見た目を考えろって、いつも言ってんだろ!』
キーンと耳にくる。
『すぃ…ません。』
『声が、小さい!』
『すいません!』
『裏で、皿洗ってこい!』
『はい!』
怖いよ…。カフェで、1番人気だろうけど、私には怖すぎる。
泣きそうな私を優しい梨華先輩が、『大丈夫?』と心配してくれた。
『向坂くん、仕事には厳しいもんね。』
『ですよね…。だって、仕事が終わったら別人ですよね。』