あなたの腕まで、あと何センチ?

『いった!!』

『おわっ!…ごめんっ!!』

私が、尻餅をついたらドアを開けた本人が謝ってきた。視線の先には、向坂くんがいる。

ボッと、一気に顔が赤くなる。

『…大丈夫です。私の方こそ、ごめんなさい。』

起き上がりながら、謝る。

『俺も、考えなしだった。人がいるって考えてなかった。』

向坂くんが、慌ててる。

私は、とりあえず向坂くんを追い越して急いで中に入ろうとした。その時、手をとられた。

ドキッと、鼓動が鳴った。

やばい、振り向けない。

『あのさ…。』

何だろう何だろう。何、言われちゃうんだろう。いてもたってもいられなくなる。たかだか、数秒なのに…。

『こないだは…。』

その時だった。

先の方から、店長の『お疲れ様』の声が聞こえてきた。パッと手が離される。
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