ずっと、ね(短)
--カシャン
フェンスが揺らいで近距離に彼の体温を感じた。
横顔が暗い気がした。
「なに、変な顔して」
「変な顔って」
笑う。弱々しくて儚くて、魅力的な、初めて見る顔だった。
「那岐と話さなくなって、俺、おかしくなりそうだった」
「あー、ね。私もちょっと寂しかった」
「……多分、俺と那岐の“寂しい”は違うと思うけど」
私の頭じゃ、悠里くんの言葉を理解するのが難しい。
「どゆこと?」とアイコンタクトを送ると、形のいい口から小さなため息が漏れた。
「俺さ、K大に行くことにしたんだ」
「……うん、お母さんに聞いた」
「なんでだと思う?」
「……ぇえーっと、」
突然の質問に私の頭はぐちゃぐちゃ。……いや、もはや真っ白だ。
意図が分からない、と、苦笑いを浮かべて逃げる。