ずっと、ね(短)










……聞くんじゃなかった。


「……っ、」


知らなきゃよかった。

嫌だ、嫌だよそんなの。





駆け込んだ教室に悠里くんの姿はなかった。急いで踵を翻して来た道を戻る。


全速力で階段を上がって、重たいドアを押す。なかなか開かないそれは、ギシギシと嫌な音を立てて少しずつ動いた。

逆流してきた風に押し戻されそうになりながら屋上に出ると、広いコンクリートのずっと先に、見つけた。





「悠里くんっ!」


声は真っ直ぐ彼まで飛んでいったみたいで。振り向いた悠里くんは、目をパチクリさせて私を捉えた。



伝えなきゃ、確かめなきゃ。



近づく距離、だんだんはっきりしてくる悠里くんの表情は、いつかみた時と変わらず曇っていた。





< 18 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop