俺がこの空を見上げる意味
政隆率いる武人集団の世話いなるようになって、俺は同年代の奴らと初めて“会話”をした。
「お前、飯は食ったか?」
どうみても俺より年下な餓鬼__耶粗が、初めての話し相手だった。
俺が黙って首を振ると、幼かったあいつは何も言わず、自分の手に持っていた握り飯を俺に突き出した。
「ん。」
いくら待ってもそれを取ろうとしない俺を、耶粗らしい仕草で促した。
しかし、そのとき俺は耶粗が今何をしているのか理解できなかった。
今まで、そんな優しさに触れたことがなかったから。
「ね、食べないの?
せっかく耶粗があげるって言ってくれてるのに。」
ひょっこり顔をだし、ほんわかとした笑顔で耶粗の行為の説明をしてくれた爪鷹。
あのときの不思議な気持ちは今も忘れない。
いらないんなら、耶粗食べちゃうよ。
爪鷹の勧めで、俺は初めての贈り物である握り飯にかぶりついた。
旨かった。
今まで食べた、夜会のどんな残飯よりも、旨かった。
そのとき俺は初めて微笑むということを覚えたんだ。