俺がこの空を見上げる意味



政隆率いる武人集団の世話いなるようになって、俺は同年代の奴らと初めて“会話”をした。



「お前、飯は食ったか?」



どうみても俺より年下な餓鬼__耶粗が、初めての話し相手だった。



俺が黙って首を振ると、幼かったあいつは何も言わず、自分の手に持っていた握り飯を俺に突き出した。



「ん。」



いくら待ってもそれを取ろうとしない俺を、耶粗らしい仕草で促した。



しかし、そのとき俺は耶粗が今何をしているのか理解できなかった。



今まで、そんな優しさに触れたことがなかったから。



「ね、食べないの?
せっかく耶粗があげるって言ってくれてるのに。」



ひょっこり顔をだし、ほんわかとした笑顔で耶粗の行為の説明をしてくれた爪鷹。



あのときの不思議な気持ちは今も忘れない。



いらないんなら、耶粗食べちゃうよ。



爪鷹の勧めで、俺は初めての贈り物である握り飯にかぶりついた。



旨かった。



今まで食べた、夜会のどんな残飯よりも、旨かった。



そのとき俺は初めて微笑むということを覚えたんだ。











< 2 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop