桜、月夜、愛おもい。


「願い?」


「うん」と凛桜が頷く。



「人間になるのが、凛桜の願いなの?」


私は問い掛ける。

凛桜は横に首を振った。



「違う。僕の願いは…少しでいいから、人間として、奈津と一緒に過ごすことだよ」



そう言うと、凛桜は私の頬を両手で包んだ。



その手は柔らかくてあたたかくて、凛桜がここにいることを実感できる。

愛しいと、心から感じる。





「奈津が…好きなんだ…」



囁かれた言葉は胸の高鳴りを呼ぶには充分で、私は声が出なくなってしまう。


嬉しさで胸がいっぱいになって、手が微かに震えた。



< 100 / 163 >

この作品をシェア

pagetop