桜、月夜、愛おもい。
「願い?」
「うん」と凛桜が頷く。
「人間になるのが、凛桜の願いなの?」
私は問い掛ける。
凛桜は横に首を振った。
「違う。僕の願いは…少しでいいから、人間として、奈津と一緒に過ごすことだよ」
そう言うと、凛桜は私の頬を両手で包んだ。
その手は柔らかくてあたたかくて、凛桜がここにいることを実感できる。
愛しいと、心から感じる。
「奈津が…好きなんだ…」
囁かれた言葉は胸の高鳴りを呼ぶには充分で、私は声が出なくなってしまう。
嬉しさで胸がいっぱいになって、手が微かに震えた。