桜、月夜、愛おもい。
赤くなる頬を感じながらも、「だって…何?」と敢えて不機嫌な態度を変えないで尋ねる。
可愛くないって思われても、いい。
私だけ照れてるみたいでムカツクもの。
それでも凛桜は、柔らかな微笑みを絶やさない。
頭上にある鈍い光が、真っ黒な彼の髪を照らしている。
私はそれを、単純に、綺麗だと思った。
「ねぇ、奈津。…明日一緒に出掛けてくれないかな?」
唐突に彼は言った。
私はぽかんとした顔で、目の前の、非の打ち所のない笑顔を見つめる。
どうやら、‘だって’の続きはどこかへ行ってしまったらしい。