桜、月夜、愛おもい。
素早く私を抱き締める。
胸一杯に流れ込んでくる花の香り。泣きそうになる。
「もうあんまり…。ごめんね」
「謝らないで。泣きそう」
凛桜の胸に顔を押し付ける。
腕を背中に回して、ギュッと抱き付く。
溢れそうになる涙を、唇を噛んで堪えた。
「奈津…」
耳にかかる凛桜の吐息がくすぐったい。身体が震える。
凛桜の声は震えていて、抱き締める腕の力が増す。
「好きだ。愛してる」
「う、ん…。私も…っ」
そう伝えるだけで精一杯。
堪えていた涙が溢れそうだ。
腕の力を緩めて、ぴったりとくっついていた身体を少し離す。
涙の溜まった目をみせたくなくて、パッと俯く。
でもすぐに、顎に絡まった凛桜の指に上を向かせられた。