桜、月夜、愛おもい。
雨が降っていた。
私は今日も、この桜の木の下にいる。
隣りには凛桜。
こんな天気のせいなのか、会話はない。
それでも、二人の間に気まずいものはなかった。
時折、上の葉っぱから落ちた水滴が跳ねて、私の足を濡らす。
でも、凛桜は傘もさしていないのにまったく濡れていない。
やっぱり、自分と同じじゃないと言うことを、頭の隅の方で考えた。
「ねぇ、奈津?」
「ん?」
ふと名前を呼ばれて、私は曖昧に返事する。
凛桜は息を小さく吸い込んで、言った。
「奈津はさ、どうしていつもここに来るの?」
身体が、心臓が、心が、凍った気がした。
「………え?」
「だからね?奈津はいっつもここに来るじゃん。僕とあう前からずっと。それも夜遅くまで。親とか、心配するんじゃないの?」
凛桜は淡々と言う。
私の様子が変わったことも気付かずに。