桜、月夜、愛おもい。
それからしばらくして、私は帰路についた。
桜の木が見えないところまで行く前に、振り返った。
凛桜はまだそこにいて、私を心配そうな顔で見ている。
「………心配性」
小さく呟いて手を振ったら、凛桜も微笑んで振り返した。
心臓が、とくんって小さな音をたてる。
まだ帰りたくないって言ってる。
あの家に帰りたくないって……泣いてる。
「………何やってんの…私」
早く帰らなきゃ。
あの人が、寝ているうちに。
私は前を向いて、歩き出した。