桜、月夜、愛おもい。
それが現われたのは、まだ暑さの残る、九月の水曜日だった。
「…台風?」
朝のニュースを見ていたお母さんが、誰に言うでもなく呟いた。
私は声につられてテレビを見た。
確かに、どこかヘタレっぽいアナウンサーが、大型台風の接近を報じている。
速度は遅く、この辺りに来るのは土日になるらしい。
「家大丈夫かしら?男手いないし」
お母さんが不安そうに言う。
私は呟いた。
「学校は休みになんないのか」