桜、月夜、愛おもい。


「てか、そんなこと聞いてるんじゃないのよ。今度の台風で折れたりしないかって聞いてるの!」


私はピシャリと言って、私より少し高い位置にある、綺麗に整った顔を睨みつける。

凛桜はそんな私を、最初驚いたように見て、それから優しく微笑むと言った。


「大丈夫だよ」



その瞳が、ほんの少しだけ悲しそうに揺らいだのを、私は見逃しなかった。

疑わしげな目を向けると、凛桜は微笑んだ。



「もうそろそろ帰りなよ?」

「え、あ…うん」


その言葉に、私は頷いた。

否、頷くしか出来なかった。


凛桜の完璧な笑顔は、拒否することを、これ以上質問することを、許さないものだったから。



「じゃあね、凛桜」


私は手を振って、その場を足早に離れた。

いつもは途中で振り返るけど、今日はしなかった。



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