桜、月夜、愛おもい。


いきなり言われた『いなくなる発言』に驚いて、私は間の抜けた返答をする。


正直、意味が分からない。


いなくなる?

一体どういうこと?


怪訝な顔をする私に、凛桜が微笑む。



「僕はね?桜の木の力で人間になったんだ」

「…力?」

「うん。簡単に言うと霊力みたいなものかな」


そう言うと、凛桜は私から離れて、桜の木に手をついた。

その表情はとても柔らかく、美しかった。



「この力は、僕にとって生きる為に必要不可欠なもの。でも、折れてしまった桜からは、もう力が貰えない」


目を伏せて、悲しそうに呟く凛桜。

私は黙ってその続きを待った。



「この桜はいずれ死ぬ。その時は僕もいなくなる。……ただ死を待つより、僕は自分の願いを叶えたかったんだ」



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