銀色幻夢
―――なのに。


私は、泣きつつも、冷静だった。


――まるで、自分が自分で無くなるような感覚。




額を、瞼を、体温の高い舌が這う。


縋り付きながら、こんな所は狼なんだ、と感心すらしていた。


こんな風に、感情を露わにして泣きわめく私と、冷静な私は、いつだって二人で一つ。


二重人格という訳では無いけれど、確かに砂雪という娘の中には、二つの顔が出来始めていた。





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