銀色幻夢
確かに聞こえたその声は、月に照らされ、段々と露わになったその生き物から、発せられた。


私は、その姿に思わず息を飲む。


だって、それは今まで見た何よりも―――美しく、恐ろしいものだったから。


「――銀の、狼……?」


間違いない。村に伝わる銀の狼だ。

赤い宝石のような、ぎらぎらと輝く双眼。

銀色のふわふわとした毛並み。


全て、言い伝え通り。



「………私を、食べるの?」


思わず出た言葉だった。


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