銀色幻夢
その言葉に狼は、私を観察するように見ると、ふん、と鼻を鳴らした。


「貴様を喰らったりはしない。確かに狼は人を喰らうが、貴様のような奴を喰らう気はせん。」


そう言って、私に近づいて来る。


「……娘、助けを求めただろう。足を怪我しているのか?」

こくんと頷く。

狼は私に近づくと、体を伏せ、乗れと促す。


「動けないのだろう? 人里には降りられぬが、俺の巣穴になら食い物や薬草がある。来い。」


素直にその背中に乗ると、風を切るように走る狼。


崖の底から続く洞穴まで、私は連れて来られた。




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