『女子中物語』 ダークネス
「十年前、校庭の大きなイチョウの樹で、
ひとりの女子生徒が首を吊って自殺しました」

松本先生はこのときまで、イチョウの樹のことなど知りませんでした。
自殺、それすら知りませんでした。
十年前のその頃にはもう唐津を離れ、東京の大学に行っていたからです。
しかし、
なんの事情も知らなくとも、なんとなくわかってしまったのです。
これから竜野先生の話すことが、松本先生にとって、とっても面倒な事件になることを。
−−そこに足を入れると、もう引き返せなくなる。
< 20 / 114 >

この作品をシェア

pagetop