『女子中物語』 ダークネス
−−放課後

<女子ラジ>の特集は噂好きの女の子たちの間で話題となっていましたが、
ここでも同じく七不思議の話題でもちきりでした。


A棟とC棟の間、日中でも日の射すことの少ない不気味の谷。
夏は灼熱、冬は極寒のこの環境にも生命は息づいており、彼女らの巣である簡素なプレハブ小屋が建ち並ぶ。
そこはさながら文化部の吹きだまり、
特に活動場所をもたない部活の部室長屋となっています
(わたしたち文芸部の部室もここにあります)。
そのひとつ、自由研究部は
とくに盛り上がりを見せていたのです。


「うわさといえばさー」

カズミさんがいうと「なになにー?」とアオイさんが反応します

「竜野せんせーのウワサ」

和美さんはたまらないという感じでくすくすと
自分だけで盛り上がりながら、話を続けます。

「竜野せんせーって昔ちょーヤンキーだったんだって!
なんでも人殺し以外はなんでもやったとか、
ヤクザがスカウトに来たとかー」

「うっそー、竜野先生やさしそうなのにー」

アオイさんの反応は大げさに聞こえましたが、
彼女はいつもこんな感じです。

「そんでね、そんでね、いまでもその背中には、
蛇の入れ墨が……」

「……あんたねぇ、」

それまで沈黙を守っていた
部長のリオさんが口を開きます。

「よりにもよって竜野先生が
元ヤンなわけないでしょ!」

怒り心頭といったリオさんですが、
カズミさんは負けずに言います。

「ほんとうだよ
うちのおばーちゃんがいってたもの
『竜野んとこのボーズが昔万引きを……』」

「竜野先生は顔も心もイケメンなの!」

「いっつも黒いシャツ着てるし
ヤンキーじゃん!」

いつものことながら、にぎやかな人たちです。
言い争いは部室長屋に響き渡ります。

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