『女子中物語』 ダークネス
「ミサキ……」

呼ばれて、ミサキさんはうつむいていた顔を上げました。

常夜灯が浮かび上がらせたミサキさんの顔は、いつものように感情を読み取ることができません。
それでも先生は、なんだかうれしかったのです。

「まだいたのか」

近づきながら言うと、ミサキさんは先生に背を向けながら、

「いま帰るところです
さよなら」

言って、すたすたと校門へ向かい歩き始めます。

松本先生は歩みをやめ、ミサキさんを見送ります。

遠くには町の灯りがぼんやりと輝いていました。

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