Bitter Sweet Kiss
全部を話したわけじゃない。

イヤなことがあったときに、母親がくれた一粒のミルクチョコで癒された、ってことだけ。

もちろんこんなこと、他人に話したのは初めてだけどさ。

だけど、なにを感傷に浸ってるマネをしてんのって。
いつまでこんなクサいキャラ演じてたって、仕様がないだろって。

そうだよ。演じてただけ。
本気でマジな話を聞かせたわけなんてないじゃん。

だから本来のオレを取り戻すべく、ふいに彼女に顔を近づけて言った。


「今日はしないんだね、ミルクチョコレートのにおい」


耳もとで囁いてからゆっくりと体勢を戻すと、案の定、色白の肌がピンク色に染まっている。

ホントのオレはこういう男。
そう。軽くてテキトーで女の子が大好きな。
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