Bitter Sweet Kiss
腰が抜けるかと思った。
臆病なわたしの目には、うっすらと涙まで溜まっていたんだ。
だけどそうなったのは、恐怖のため、だけじゃなかったの。
「よく会うね」
屈んで首を傾げた彼がそう言ったから。
「こんばんは、ミトちゃん」
あの、わたしの大好きな笑顔をくれたから。
雨で濡れた前髪をかきあげた彼。
その拍子に飛んだしずくがわたしの鼻について。
クスッと小さく笑い、濡れた指先でそれを拭ってくれた。