Bitter Sweet Kiss
ほんの数秒、ほんの数ミリ、たったのそれだけなのに。

体温が重なったことに、わたしの体? それともこれは心?

どちらかはわからない。でもとにかく反応したんだ、トクンって音を立てて。


「あの、わたしの名前…」

「ん?」


覚えていてくれたんだ ――。

それだけで涙が出そうになる。


「あー。ミト、って可愛いからね。
なんかご褒美くれる?」

「え?」

「名前を覚えていた、ご褒美」


そう言って彼はまたあの顔で笑う。
目を細め頬を緩ませた、子供みたいな笑顔で。
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