Bitter Sweet Kiss
病院を出たオレは、車を走らせ迷わずにここへやって来た。
照りつける太陽の下、サッカーボールと戯れる子供達がいるかと思ったんだけど。予想を反し、そこにいたのは少年が1人だけ。
誰もいない芝生の上をドリブルしながら走る姿。
でも残念ながらウマくはないんだな、これが。
動きのひとつひとつにキレがないのは仕方がないにしろ、なんか遠慮してんだよね。
オマエがキープしてるボールなのに、そんな消極的でどうすんだって。しかも今って1人っきりっしょ? あんなんじゃ試合になったら奪われてばっかじゃん。
「たまには汗でも流しておこっか」
誰に頼まれたわけでもないけど。オレは車を降りて、その少年のもとへと駆け寄った。