Bitter Sweet Kiss
まるで親子らしいことをしていたみたいじゃん。

だけど。

目の前で笑いあう二人の姿を眺めていたら、よみがえってきたんだ。

分厚い壁で覆って、かたく閉ざしていた扉。
決壊し、その中から少しづつ解かれていく。

久しぶりに目にした老けた横顔に若々しい頃の面影が重なり、浮かんだ1枚のスクリーンに映しだされたのは ――

どうしていままで忘れていたんだろうな。

あのミルクチョコの思い出って……チョコレートをくれたのは……その手はキョウコちゃんのものじゃない。

幼かったオレの前に差しだされた赤い包み紙。とろけるようなチョコの絵が印刷されたそれを持っているのは、

大きくて温かな手だった。


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