Bitter Sweet Kiss
店を出て人ごみの中をふらふらしながら歩いた。
息が苦しい。
荒さを増していく呼吸を押さえこむように強く胸に手をあて、雑居ビルの壁に背中をつけた。
「…もしもし?」
無意識にその番号へかけていた。
返ってきたのは、頼りなくて、か細い声。
「苦しいんだ…」
ひとり事みたいに一言漏らすと、さっきより息があがっていく。
そういや薬、切らしたままだったな。
発作なんてずっと起こしてなかったから、飲まなくたって変わりないように思ってたけど。案外そうでもなかったみたいだ。