Bitter Sweet Kiss
カイ君のお父さんは、有名な病院の会長をしてる人。

うちのお母さんの勤め先よりずっと大きな病院で、顔は知らなくても“望月”という名前はわたしも知っている。

カイ君のママは若い頃、そこで看護師をしていたんだって。

やがて望月先生と恋に落ちてカイ君のことを身籠ったんだけど。先生には奥さんも子供もいた。


認知されることもなく、ずっと二人っきりで生活してきたカイ君とママ。

だけどお金にだけは困らなかった、って彼はまた吐きだすように小さく笑って。そんな様子を見つめながら、わたしの胸はチクンと痛んだ。


「ガキん時はイジメられもした。
母子家庭のくせにイイ暮らししてるわけだし。あそこの院長と不倫してるんだって、なんて話は大人から子供にも感染しちゃって。意味もわかんねーくせに“愛人”とか“めかけ”とかいろいろ言われた。

でさ、オレ自身もガキだったから、こんな目に合うのは全部アイツのせいだってずっと思って恨んでたんだ。

まっ 単純な発想だけど」
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