Bitter Sweet Kiss
それから彼は少しの力を込め、そのまま自分のほうへわたしを引き寄せたの。

バランスを崩しながらその胸に顔が埋もれて、カイ君の体温と香りに包まれ、これ以上ないくらい心臓が高鳴り始める。

そして、そのタイミングで放たれた甘く優しい響き。


「ねぇ ミト、もう一回訊くよ?」


頭上から落とされた声が同時に彼の胸を通じてエコーしてくる。

わたしの胸は焦げるくらいに温度を上げて、ドキドキが響いていた。


「なにを?」


尋ね返したわたしに、一拍程の間を置いてからゆっくりともう一度言葉をくれた彼。


「他の誰かとキスしたことがあるオレと、するのはイヤ?」
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