Bitter Sweet Kiss
「二人で話し合ったの」
そう切りだしたキョウコちゃんの表情はいつも通り穏やかなもので。ぎこちなかったのはやっぱりオレのほうだったんだって思った。
そして次の言葉も微笑みを絶やさずに発せられた。
「すぐに一緒に暮らさなくてもいいかなって」
「……どういうこと?」
「カイちゃんが納得してくれるまで待つことに決めたのよ」
そしてキョウコちゃんは笑顔のまま、お手製のアップルパイに手をつけた。オレのお気に入りでもあり、あの人の好物でもある。
『毎日でも食べたい』って言ったオレに『お父さんも同じことを言ってた』って笑ったキョウコちゃん。
あれはいつのことだったかな?
あの時もいまみたいに、胸の中に広がる黒い気持ちを感じていたんだ。