Bitter Sweet Kiss
「藤沢、ちょっと話したいんだけど」


突然後ろから声をかけられたのは、人気の少ない化学室の前だった。


「遠山くん…」


振り向いたわたしの目の前にいるのは、俯き気味に伺うようにしてこっちを見ている彼。

彼もあの写真のことがあってから、いろんな噂話のネタにになっていた。

一番に言われているのは、わたしのことを尾行して写真を撮って、そしてみんなに見えるように机に置くというマネをした張本人じゃないかっていうこと。

真相はわからない。できればそう思いたくなかった。

だって遠山くんがそんなことをする理由なんて思いつかなくて。スポーツマンで明るい彼は、クラスでも人気者だったし。

だけど注目を浴びて中傷までされるようになって、わたしと同じように彼も大変なようだった。

前みたいに輪の中心にいる遠山くんじゃなくなっていたから。
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