Bitter Sweet Kiss
椅子から腰を浮かせると足がふらついた。
一歩づつ歩くごとに頭まで朦朧としてきて、家へ帰りたいと思った。
久しぶりに慣れた匂いのする巣箱へ戻り、ベッドに埋もれて気が済むまで眠りたかった。
そして目覚めたらキョウコちゃんの手料理を食べよう。
そんなことを考えながらホテルを出ようとしたオレを、ナツミさんの腕が止めた。
息をあげながら振り解こうとしたが、力が入らない。
悲鳴をあげて痛みを訴える胸もとに、手のひらを押しあてる。
これって発作のせいだけ?
やっぱり、さっきのってヤバいもんだったんじゃね?
苦しくて思わずその場に屈みこみそうになった時、小さな顔が瞼に浮かんだ。