Bitter Sweet Kiss
胸さわぎを覚え駆けつけた場所は、大きなホテルのラウンジだった。

それから数十分後には来たことを後悔することになるのに、その時のわたしは何も気づけなかったの。

“復讐”って言葉に、彼を守る、ってそんな気持ちが湧いていたんだ。

だけど必要なかった。

“守る”だなんて、わたしはただ彼に片思いしているだけなのに。
そうだよ。勝手に一方的に好きになっただけなのに……。

ホテルの一室へ消えていく彼と女の人の姿を見つめながら、隣にいる遠山君が囁いたの。

『ウソつきが誰なのか、これでわかっただろ?』って。


心がバラバラになりそうだった。

あの子供みたいな笑顔までも信じられなくなりそうだったから。
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