Bitter Sweet Kiss
その場へ遠山君を残し、わたしは逃げるように家へ戻った。

初めて彼を見たときの、あの笑顔も
ミトってわたしの名を呼ぶ囁きも
息苦しそうに『助けて』って言った掠れ声も
抱きしめられた温もりも
初めてのキスも。

思いだされる全部が崩れていきそうで。

苦しくて苦しくて……“ウソ”だなんて思いたくなかった。

だけど ――。



そして、携帯が鳴ったのは翌朝のこと。

画面に浮かんだその名前を見て、すぐには出られなかったの。

だけど鳴り続くコールを無視できなくて、「はい」って小さく応えたわたしに言葉をかけたのは、彼のお母さんだった。
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