Bitter Sweet Kiss
「ミト……」


戸惑いながら、わたしの名前を口にしたカイ君。たったそれだけのことに涙が出そうになる。


「どうしてここに?」


言いながら体を起こそうとした彼が顔を歪めた。


「痛っ!!」

「大丈夫!?」


咄嗟に手を伸ばす。そしたら腕を掴まれたんだ。

2人っきりの病室が静寂に包まれる。

心臓が壊れるくらいに振動して、一気に体温が上昇していった。


「ミト?」


もう一度名前を呼ばれて、気持ちが乱される。

好きなのに、好きだけど……

そして。

わたしは顔を上げずに目を逸らした。それは半分は無意識で、残りの半分は意識的な行動だった。
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