Bitter Sweet Kiss
「カイ君ママから電話をもらったの。倒れて救急車で運ばれたって」

「それで来てくれたんだ?」


優しい声に気持ちが溢れそうになる。だけど慌ててブレーキをかけてるのもわたし。


「ずっと家にも帰ってなかったんでしょ?」

「それもキョウコちゃんから聞いたの?」


問いかけられてもただ頷くのが精一杯。目線も上げられないまま。


「いけないよ」

「え?」

「あんな優しいママに心配かけちゃいけないよ」


俯いたまま、そんなことを言ってみる。

本当はね、わたしだって心配したんだよ。病院へ運ばれたなんて聞いて、すごくすごく心配でたまらなくて飛んで来たんだよ、って。

言いたいのに、言えない気持ち。それをそっと飲みこんだ。
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