Bitter Sweet Kiss
「ごめん」


不意に彼が言った。

思わず顔を上げたわたしに、彼はさっきのような笑顔じゃなくて真面目な顔つきで繰り返す。


「心配させて、ごめんな」


その言葉に唇を噛みしめた。

だってそうしないと今度こそ泣いてしまうから。泣いてしまったら“好き”って気持ちまで溢れてしまうもの。

なのにカイ君は、わたしの腕を引き寄せて、その胸にわたしの顔をうずめたんだ。

鼓動が加速する。


「苦しいよ、カイ君」

「……でも離したくない」

「どうして……?」
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