Bitter Sweet Kiss
「ミトの顔見てたら思いだしたんだけど。
ほら、あそこの息子とアンタ付きあってたことあったでしょ?」


付きあってなんていなかったのに。そう思ってみるけど、わざわざ訂正するようなことでもないし。

そういえばあの時、お母さんひどく反対したよね。入院してた彼の担当してたから知ってるんだって言って。

懐かしい出来事を思いだしたわたしは、ちょっと気になった。


「お母さん、カイく……な、成瀬さんってそんなに重い病気だったの? あの時言ってたでしょ。彼だけはダメって」


言葉を選びながら尋ねたのに、なぜかお母さんは小さく吹きだした。


「重い? 違う違う。ダメって言ったのはチャラチャラしてるから」

「チャラチャラ?」

「入院してる間すごかったんだから。入れ替わりで女の子がお見舞いに来るし、若い看護師とイチャイチャするし。
あの時の入院だって不摂生が原因でしょ。発作のためとはいっても彼の場合、喘息自体ごく軽いものだったから」


軽い喘息?
そう……そっかぁ。そうだったんだ。

気がついたら心から安心してるわたしがいて、ちょっと苦笑してしまった。
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