Bitter Sweet Kiss
でもね。

眠りに落ちる前に見せた無邪気であどけなさの残るあの笑顔が、間違いなく彼だったの。

あの日と同じ、あの顔。

そしてわたしは聴いたんだ。心の中で鳴り響く鐘の音を。

同時にその意味も知った。知ってしまった。

高鳴る鼓動、キュンと狭まる胸、こみ上げてくる……

強引に腕を引かれ、触れられた肩がいまでもジーンとしてる。

いつもはあんなことする男の人、嫌いなはずなのに。
なのに嫌じゃなかった。ドキドキしたの。

ドキドキっていってキューッて心臓が苦しくなった。

その瞬間、気づいてしまったんだ。

紛れもない、これは……恋だ。

もう会えないと思っていた彼に、わたしはまた恋をした。
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