峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
叫びながら、峰岸の肩を両手で押した。


「いいから!行ってよ!」


離れて、峰岸。

あたしなんか、気にしないで。

何にも知らない峰岸。

あたしの事、何にも知らない。

あたしも、峰岸がどこまで行くのかわかんないもん。

わかんないから不安、悲しい……期待する。


あたしが一つ目のハードルを飛び越える時、峰岸は三つ目を飛び越えてるから。


なのに、峰岸は振り向かないじゃん。

待っててくれないじゃん。

ならいっそ、冷たくしてよ。



「峰岸の馬鹿!」

「馬鹿だよ、永山が泣いてる理由すらわかんないんだよ」

「わかんなくていいよ!」


振り向かない峰岸になんかわかんないよ!


「言いたくないなら聞かないよ。でも、泣いてる永山見て平気でいられる程、俺は薄情じゃないよ」


分かってるよ、峰岸はそういう奴じゃないって事くらい。


「だからって訳じゃないけど…泣くなよ」


止めてよ。

そんな目で見ないでよ。


行ってと言いながら、峰岸が行かないって知ってて言ってるあたしを…見抜かれそうだから…見ないで。



「……永山」


あたしを覗き込む峰岸。
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