峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
別に怒られるのはあたしじゃないからいいけど。



「永山、空が何で水色か知ってる?」


「大気中の水蒸気と太陽が関係してるんでしょ?何回も聞かされたじゃん」


「そうだっけ?」



話した事すら覚えてないし。


覚えてないって言うより、峰岸は何回も話したいんだと思う。



多分、宇宙への憧れと夢と期待を、どう抑えていいかわかんないんだろう。



「話したいんなら話してもいいけど?」




そうしてほぼ毎日、あたしは宇宙について峰岸に語られるんだ。


宇宙の誕生から、アインシュタインや水素原子、光の速さとか他惑星の大気とか。


理解できない話を延々と。



でも一生懸命、宇宙について語る峰岸の横顔を、あたしは気に入ってる。



笑いながら楽しそうに、瞬きすら忘れて話すんだ。


あたしはずっと、そんな峰岸の横顔を見てる。



だから正直、峰岸の宇宙論は半分も記憶に刻まれていない。



でも峰岸は、そんなあたしには気付いてない。



それでいいんじゃないかなと思う。
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