峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
だから、伝えるんだ。

峰岸が、あたしを見てくれますようにって祈りながら。

伝えるよ、峰岸。



峰岸と居る時間は、あたしの決心をたきつけるみたいに、腕時計の短い針は、秒針みたいな速さで回り、限られた時間を確実に減らしてく。


いつ伝えようか。

帰り?

どうしよう。


針の様にグルグル回るあたしの思考。


辺りは暗くなってきていた。
冬の日照時間の短さを恨んでしまうくらいに。



「そろそろ帰ろっか」


峰岸の言葉に、今が夏なら良かったのに、なんて思った。

ポケットに両手を突っ込んで歩き出した峰岸の一歩後ろを、あたしはうつむきながら着いて行く。


いつ伝えよう。


コートのポケット、入れた手紙を手探りで確認しながら、あたしはドキドキしてた。


峰岸の背中を見つめる。


峰岸…峰岸…。


「あ……」

突然、峰岸は立ち止まった。
白い息を吐きながら、空を見上げる。


「雪だ」


雪?


峰岸の呟きに空を見上げた。
重なる黒い雲から、白い綿があたしの鼻先に落ちて、溶けた。


「ホントだ」
「ね?」


峰岸は、手の平を空に向けて笑う。
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