峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
峰岸。

そんな自然な仕草にさえ、あたしはドキドキするんだよ?


雪は大粒で、広げた峰岸の手の平に落ちて、体温に溶け合っていくのすら見えた。



あたしが、雪なら良かったな。

そんな事を考える自分は、馬鹿だなって思うよ。

でも、そう思ってしまうんだよ…峰岸。



「ねぇ、永山は覚えてる?」

溶けた雪の名残を惜しむ様に、手の平をにぎりしめた峰岸は言う。


「小学校に古い桜の木があったろ?永山が転校してきた日、一緒に帰ってさ…」


あ………。


「桜の花びらが地面に落ちる前にキャッチできたら、願いが叶うって、永山が教えてくれてさ」

「……覚えてるよ」



あたしが峰岸の宇宙への夢を、初めて聞いたのはその日だ。



あたしと峰岸は、二人で桜の花びらを掴もうとしたんだよね?

ランドセルを木の根元に放り投げて、踊る花びらに逆に踊らされながら、必死で手を伸ばしたね?


でも、キャッチできたのはあたしだけだったよね。


『峰岸くんの夢は何?』
『……宇宙飛行士』


峰岸は、恥ずかしそうに教えてくれた。
言うとみんな笑うんだって、少し唇を尖らせながら。


忘れる訳……無い。
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