峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
あたしと澤村くんの式は来年の6月になった。


澤村くんがジューンブライドにこだわったから。
一生に一度なんだからって。


そんな風に、あたしの事を考えてくれる澤村くんを、あたしも幸せにしなくちゃって決めた。



峰岸はアメリカに居る。
あたしの近くには、居ない。


これからも変わらないよ。

会う事だって無い。
会う訳ないよ。

峰岸はいつか、宇宙に行くんだろう。
それだけが、峰岸の見ている全てだった。



あたしは八年前、それを思い知ったんだ。


峰岸を思い出しても、もう、苦しくなる事はなくなってる。


なのに、何でなんだろう。

アメリカに行って、宇宙の勉強をして…必ず宇宙へ行くと言った峰岸。

実現させるだろうって、今でも信じてる。


だからかな……。

峰岸の記事を探してしまうんだ。


ニュースとか、新聞とか、科学関係の雑誌とかの中に、峰岸勇樹の名前を探してしまうんだ。


会いたいとか、連絡しようとか、考えてはいない。


ただ、探す。

峰岸はきっと、今も宇宙に向かって手を伸ばしているはずだから。


あたしが泣いて諦めた意味は…宇宙だから。
< 51 / 94 >

この作品をシェア

pagetop